その昔、たとえば四谷大塚の予習シリーズを一例に挙げると、小学4年生用教材が「ジュニア予習シリーズ」と呼ばれた時代がありました。学習量や内容はゆるやかで、必要とされる学習量も適度であり、無理のない、中学受験学習の入門編といった趣をもつものでした。子どもたちはそれほど負担を感じることなく、自らの成長の度合いにあった学習を進め、知的な興味も自然に導き出されていく余裕がそこにはありました。小学5年生対象の「予習シリーズ1」あたりからがいよいよ本番。本格的にレベルが高くなり、内容量も増えていって、「予習シリーズ4」に至るまで、その消化や理解、定着に小学生たちは奮闘努力したものです。
しかし、今世紀に入るころから、中学受験学習教材は、学習内容が下の学年に前倒しされる傾向が出始め、予習シリーズもその例にもれることなく、レベルは難化し、量も増え、進むペースが早くなり、小学4年生でも算数をはじめとする苦しみが生ずることとなりました。「上位校合格に間に合わなくなる」といった強迫観念のもとで早期学習が叫ばれ、子どもたちは、学びの楽しさを経験する間もない点取りゲームに深く足を踏み入れることになってしまったのです。結果として、小5や小6で息切れし、伸び切ったゴムのようにしなやかさを失い、競争から取り残されていく子どもたちも多く見られるようになりました。
この度、小学3年生コースを開くのは、早期英才教育といった方針のもとではありません。まだ、ゆるやかな学習が許されるこの時期に、ひたすらページをめくって単元学習を頭につめこむのではなく、「知ることや考えること、解き明かすことの楽しさ、学びの原点をじっくりと過ごすこと」を基本姿勢として学習を進めていこう、という趣旨のもとです。もちろん先駆的にしっかりとした学習習慣を身につけ、自らの学習法を確立させることも重要ではありますが、何よりも大切なことは、伸びやかな知的好奇心の大いなる目覚めです。小学3年生時代の豊かな過ごしが、やがては本格化する中学受験学習へ、地に足のついたたどりとなることを目指して学習を進めていきます。